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沖縄本島北部、本部半島にある小さな港、山川港。ここから船で5分ほどの伊江島がよく見える場所に、サメやエイ、マンタなどの海洋生物が自然の海の中で飼育されている海上生簀(いけす)がある。

彼らの食事は10時と14時の1日2回。生簀を管理するOSC株式会社では、この時間を利用した「マンタやサメの飼育観察体験ツアー」という観光プログラムを毎日開催している。

筆者が実際に体験するまでは、小さな子どものいる家族向けの体験プログラムだと思っていた。しかし、アクリル板越しの水族館とは異なる角度から見る、海の大型生物たちの「食」にまつわるこの大迫力のネイチャープログラムは五感と知的好奇心を大人でも大いに刺激されるものだった。最近では、家族連れだけでなくOSCが発信するSNSを見て訪れる若いカップルなども多いと言う。

大きな口を開けて食べる姿は大迫力だ
大きな口を開けて食べる姿は大迫力だ。

出発は本部町の小さな港から

この旗が目印。
この旗が目印。
乗船時はスタッフがサポートするので、安心。
乗船時はスタッフがサポートするので、安心。
海の上でとても頼もしいガイドの三谷さん。
海の上でとても頼もしいガイドの三谷さん。水族館で働く時から海洋生物や環境問題にあらゆる角度から向き合ってきた彼だからこその話を聞くことが出来るだろう。

リゾートとは違う、海の魅力を探しに行こう

カーナビを頼りに「本当にこの道であってる?」と不安になるほど細い集落内の道を進んだ先に、集合場所の山川港はあった。県民にすらあまり知られていないであろうこの小さな港は実は地元で人気の釣りスポット。釣り竿を持った人で賑わっていた。車を停めてツアーの旗の元へ向かうと、ガイドの三谷祐太さんが手を振って迎えてくれた。自然環境を守りながら持続的な地域発展に尽力するOSC株式会社のスタッフの多くは三谷さんを含め皆、長年海の生き物と触れ合ってきたプロフェッショナルだ。

港で同意書に記入すると、救命胴衣が手渡された。私が知っているベスト型のものとは違う、コンパクトなベルト型のウエストに装着する救命胴衣。これにはガスが充填され、落水を感知すると膨らみ浮き輪のような役割をするという。なるほど、動きやすいがあまりにコンパクトだ。しかし「これまで一度も発動するような事態になったことはありません」という三谷さんの言葉に安堵し、船に乗り込んだ。

海上生簀
海上生簀

生命力の強さを感じる、圧巻の食事風景

生簀にいる魚について、紙芝居形式で解説。
生簀にいる魚について、紙芝居形式で解説。
この日の餌はイカやカツオ、サバなど。冷凍でなく活魚だと食いつきがいい。
この日の餌はイカやカツオ、サバなど。冷凍でなく活魚だと食いつきがいい。
元気いっぱいのグルクマ。
元気いっぱいのグルクマ。

予測がつかないからこそ、自然体験は面白い

船が出港して約5分。波に揺られながら、生簀にいる海洋生物やこの1月から3月にかけて沖縄近海にやってくるザトウクジラについての話を聞いている間に目的地へ。そこには6つの生簀があった。生簀の深さは約6メートル。その外側には、海底まで続くカーテン状の頑丈な網が張られていて、生簀の外からの危険生物の侵入を防いでいる。

毎日ほぼ同じコンディションで鑑賞できる水族館と異なり、天気や季節によって透明度や魚の見え方が日々変化する自然の海。水温が上がる春から夏にかけては魚の活性が上がって餌の食いつきが良くなるし、よく晴れた凪の日には水深20mまで目視できるほど透明度は上がる。しかし食事は命をつなぐ上で毎日必要なこと。ツアーは強風や雷など、危険が伴う状況で無い限り通年催行される。曇りの日も雨の日も、水温が低く元気の無い日もそれが自然の姿なのだ。ツアー参加者には理解した上で、ありのままの自然を楽しんでもらっているという。

この中から3つの生簀を回るという。最初にグルクマ(スズキ目サバ科の青魚)とエイのいる生簀の側に。小さなバケツに入ったイカやカツオなどの切り身がこの日の餌だ。このバケツを持って、生簀をぐるりと囲む浮きに降りると水底にいた魚が水面近くに上がり集まってきた。船が近づいてきた時点で魚たちは食事の時間と認識しているのだ。これは可愛い。魚により食性が違うためまずエイに、その後グルクマと2回に分けて異なる餌を与える。エイの食べ方はとても控えめだったが、グルクマは水中に落とすなりものすごい勢いで食いついてきた。その激しさにただただ圧倒されてしまった。

食べる瞬間、白目になるのがサメの特徴。
食べる瞬間、白目になるのがサメの特徴。

大きな口を開けて食べるサメに興奮

そして気づく、意外な姿

バケツの餌が空になったら、船に戻り移動する。次は危険ザメの生簀だ。ここにはホホジロザメの次に危険と言われるイタチザメがいる。イタチザメは、沖縄近海に生息する危険ザメで水族館での長期飼育が難しく、その生態については不明なことが多い。ここにいるイタチザメは水族館で生まれて現在5歳。国内でも3mほどある危険ザメを長期飼育している施設は無い。そのためマンタよりも、このイタチザメを見るために、日本全国・海外からも多くの人がこの場所にやってくるというのだ。

危険ザメの餌やりはスタッフが行う。棒の先に刺した餌を白目をむきながら大きな口でかぶりつくその姿は大迫力で、落ちたら危険だという緊張感の中、波に揺れるいかだの上で手すりにしがみつきながら夢中で観察していた。しかしよく見ると、つぶらな瞳もあいまって、少し可愛いと思ってしまった。

サメしかいないはずの生簀には、複数種の小さな魚もいた。網の隙間から入ってきて、ちゃっかりこぼれ餌を食べて成長して出られなくなった魚達だ。大きさや種は違えど、生簀の中で繁殖しながらうまく共存して生きている。

サメは餌を目視で食べることが出来ないため外してしまうことも。
サメは餌を目視で食べることが出来ないため外してしまうことも。

水族館の人気者、マンタ

マンタの食事は右回りにくるくると

最後にマンタのいる生簀へ。マンタは身体も口も大きいが元々野生のマンタが食べているのは海を漂うプランクトン。ここでは、オキアミを主体に、栄養バランスを考え、配合飼料や細かく切ったサバなどを混ぜたものを柄杓で海面にそっと落とす。それをマンタは海水と一緒に口に流し込んで食べるのだ。その際に海面にゴミがあると一緒に食べてしまう恐れがあるため、餌やりの前には毎回スタッフが海に入って生簀の中を掃除する。少し前までは軽石も多く清掃が大変だったそう。生簀の清掃を待つ間、サメやマンタの顎の骨を見せてもらった。顔がすっぽり入るくらいの大型のものから、拳が入るか入らないかくらいの小さなものまで、サメとエイは同じ軟骨魚類でも種によって歯の形状も生え方もサイズも大きく異る。内側に何層にも重なって生えていたり、ヤスリのようなつぶつぶの歯だったりと興味深い。

生簀の清掃が終わると、餌やりに使う柄杓で軽く海面を叩く。するとその合図で、海底にいたマンタが水面近くに上がり、生簀の中を右回りに泳ぎだした。餌やりの際に他のマンタとぶつからないよう、右回りに泳ぎながら餌を食べるように教えられているのだ。大きな口を開けて餌を流し込む様子はかなりの迫力だった。柄杓4杯分の餌を食べ終わると、マンタは自ら海底に潜っていく。マンタの知能の高さには驚かされた。約1時間の体験プログラムは、あっという間に終了してしまった。

こんなに大きいものも。
こんなに大きいものも。
大きな口で海水と一緒に吸い込んでいく
大きな口で海水と一緒に吸い込んでいく

この体験を、環境問題に興味を持つきっかけに

課題は多い。だからこそ、考えなければいけないこと

「魚による食性の違いや、飼育環境についてなど、伝えたいことはたくさんあります。環境については課題が多く、まだまだ軽石の問題も解決には至っていません。そんな中で、人種・年代を問わず多くの人が訪れる海上生簀について、それぞれ見方は異なります。特に欧米人はこのプログラムを単なるレジャーとは捉えず、この環境が飼育動物にとって適切な環境になっているか気にされる方がとても多い。僕たちはそういう声にもきちんと向き合うことを課題としていて、英語は拙いですが資料を用意するなどして出来る限り説明していきたいと思っています。もちろん、マニアックなお子さんからの質問も大歓迎。お子さんの知的好奇心を満たすお手伝いもぜひしたいです。」
(OSC株式会社 飼育管理二課 飼育技師/三谷祐太)

その他にも、水族館の裏話や、飼育員の裏話など、他では聞けない話も聞くことができるのがこのツアーの魅力。沖縄美ら海水族館入園チケットのセットプランもあるので、ここでみたマンタやサメを別の視点からも見てみよう。オリエンタルホテル 沖縄を拠点に丸1日北部を移動しながらたっぷり遊び、様々な視点から沖縄の海を観察し触れ合うことで環境について考えるきっかけにして欲しい。

OSC株式会社

"沖縄の海の魅力を世界中へ"とのコンセプトのもと、沖縄の豊かな海洋資源としての「魚」を“生かす・運ぶ・見せる”技術で、これまで未利用であった資源の高付加価値化を図ることで、地域経済に好循環を生み出すことが当社の役割です。

同じく本部町の海上生簀ではマンタと一緒に泳げるマンタシュノーケルをやっていたり、国頭村辺土名ではやんばるタッチプール&飼育体験、やんばる定置網漁体験をやっている。沖縄旅行の際にはやんばるドライブに組み合わせて、学びのある海遊び体験として取り入れてみては。

OSC株式会社